ブカレストを拠点とする Wave Studio は、ビジネスを急拡大しているモバイルアプリ デベロッパーです。2022 年には Financial Times により、ルーマニアで最も急速な成長を遂げているテクノロジー会社と評価されました。2016 年以降、人気の高い Wave Live Wallpaper 3D アプリをはじめとするカスタマイズ アプリを 1 億 8,500 万人のユーザーがダウンロードしています。
最新のアプリがいっそう人気を集めていることから、同社は収益化というビジネスの側面を最適化することに着目し、アプリと広告を利用する可能性が高いユーザーにアピールしながら、ユーザー獲得にかかる費用も常時確認することを目指しました。そして平均的なユーザーのライフタイム バリュー(LTV)を高めることを最終的な目標としました。
Wave Studio は Google のプロダクト(Firebase Remote Config、AdMob ネイティブ アドバンス広告、広告収益重視の目標広告費用対効果)を利用して、これらすべての目標のほか、さらにいくつかの目標の達成を目指しました。
ユーザー獲得の費用とユーザーのライフタイム バリューの兼ね合いを図る
2014 年創業の Wave Studio は、Android と iOS の両方を手掛けるモバイルアプリ デベロッパー兼パブリッシャーで、ツールやカスタマイズ カテゴリのアプリを中心として、モバイル デバイスのユーザー インターフェースをパーソナライズするさまざまな手段をユーザーに提供することを主な目標としています。
創設者の Vlad Andries 氏と Tiberiu Avramiuc 氏は、手始めに他社がリリースしたキーボード アプリに対応したシンプルなテーマのアプリをいくつかリリースしました。自社のビジネスモデルが他のデベロッパーの商品に完全に依存していることに気付いた彼らは、2016 年に最初の Android 向けアニメーション キーボード アプリである Wave Keyboard をローンチし、翌年には Wave Live Wallpapers をリリースしました。2021 年には、Android 向けカスタマイズ カテゴリ アプリの上位デベロッパーに仲間入りしています。
「キーボードから壁紙に軸足を移したことで、面白くてインタラクティブなユーザー獲得キャンペーンを新たに作成する必要が生じました」と Andries 氏は述べています。「効果的なユーザー獲得戦略を策定したところで、よりいっそう大規模にユーザーを獲得するには、収益性を最適化して改善するしかないと気付きました。」
Wave Studio のビジネスモデルは、有料のメディアでのアプリの公開と宣伝を基盤としています。これは広告収益に非常に重きを置いたハイブリッド型モデルで、収益の約 90% をアプリ内広告(IAA)で、残りの約 10% をアプリ内購入(IAP)で獲得しています。
Andries 氏によると、同社は新規ユーザーを獲得するために、より費用効率と拡張性の高い手法を模索していました。こうした目標に加えて、アプリ内でより多くの広告収益が見込めるユーザーを呼び込んで、平均的なユーザーのライフタイム バリューを高められるよう取り組みました。
Firebase Remote Config の A/B テストを使って広告の収益性を最適化
Wave Studio はまず、Google の Firebase Remote Config を使用して、広告フォーマットやアプリ内プレースメントのほか、ユーザーあたりのインプレッション数といったあらゆる項目について、数百通りの A/B テストを実施しました。Firebase、AdMob、広告収益重視の目標広告費用対効果を駆使することで、ユーザーを大規模に獲得して、ユーザーのライフタイム バリューに基づいた健全な広告収益を維持することが可能な、新しいモデルを構築できました。
「数百通りの A/B テストを実施した結果、アプリユーザーのライフタイム バリューを 250% 以上引き上げることができました」と Andries 氏は語っています。
Wave Studio は、あらゆる種類の広告フォーマットを組み合わせ、さまざまな収益化シナリオをテストすることで成功に至りました。AdMob ネイティブ アドバンス広告の導入は、同社にとって転機となりました。Andries 氏によると、現在同社では収益の 5 割超をこのフォーマットで獲得しています。
広告収益重視の「目標広告費用対効果」入札戦略を使って獲得済みユーザーのライフタイム バリューを可視化
広告収益をもたらしたユーザーのライフタイム バリューを正確に計算することが、アプリ デベロッパーにとって最大の課題となっていると Andries 氏は認識していました。Wave Studio では、ユーザーがアプリ内購入にどの程度の金額を費やし、広告を利用してどの程度の収益をもたらしているかを可視化していなかったため、新規顧客の獲得に向けて CPI(インストール単価)を最適化するためのデータがありませんでした。
そこで Google チームは、「目標広告費用対効果」入札戦略を使用すればインプレッション単位で収益を測定できることを説明しました。Andries 氏は、そのようなイノベーションを長い間待ち望んでいたと言います。
「目標広告費用対効果を使用すると、IAP による収益と同様に IAA による収益を扱うことができます」と同氏は述べています。「アプリ利用の全期間で一人のユーザーから生じた収益を把握できるのです。」
目標広告費用対効果を導入するまで、同社では定量データに基づいたユーザー獲得戦略を使用し、同じ地域のすべてのユーザーに対して同じ CPI を設定していたため、ボリュームが大きく制限されていました。しかし、「目標広告費用対効果」入札戦略の導入が転機となりました。Andries 氏によると、一部のユーザーは平均的なユーザーよりも多くの収益をもたらしていたため、そうしたユーザーに対しては投資を増やすのが妥当でした。そこで目標広告費用対効果を使用したところ、これまではリーチの対象外だった価値の高いユーザーに広告を表示できるようになりました。
「突然、支払い可能な CPI よりも、ユーザーがもたらす費用対効果のほうに重きを置けるようになりました」と Andries 氏。「ユーザーを獲得する費用が 1.50 ドルだったとしても、そのユーザーから 2 ドルの収益が得られるならば構わないでしょう。」
月あたり 200 万回の新規インストールを獲得して広告収益を 30% 増加
Wave Studio では、2021 年 9 月に「目標広告費用対効果」入札戦略を導入してすぐに好結果が得られました。Andries 氏によると、2022 年の第 1 四半期には、全体的な広告収益が 30% 増加しました。
「目標広告費用対効果を使って、健全な収益性を維持しながら、150 万人~200 万人もの新規ユーザーを獲得することができました」と同氏は述べています。
また、一定の CPI に基づくユーザー獲得キャンペーンは拡張性が限られていることも Andries 氏は指摘しています。Wave Studio は目標広告費用対効果を使用することでキャンペーンをすばやく拡張し、広告の合計収益を増やすことに成功しました。
同社は現在、アプリ内エクスペリエンスを改善することでユーザー維持率を高めることを目指しています。例を挙げると、ユーザーが自分で壁紙をデザインできる新しいツールを開発したほか、有名なアーティストを招聘して新しいデザインを制作する試みにも取り組んでいます。
「アプリの長期的な利用を増やしたいと考えています」と Andries 氏。「壁紙については小規模なソーシャル ネットワークを構築することも検討しています。単なるライブ壁紙のディレクトリではなく、ユーザーがより総合的な方法でデジタルアートを消費および共有できる場にしたいと考えています。」